子育て

【カウンセラーが警鐘】9月入学が未就学児に与える深刻な影と問題点

9月入学について、「賛成」「反対」と様々な意見が飛び交っています。

「もう一度、年長さんがやり直せるから賛成!」

「9月入学になれば、海外と合わせられるから良さそう」

「入学はまだまだ先だし、うちの子には影響ないよね」

なんて思っている幼稚園・保育園ママさん、本当にそうでしょうか?

まだ現時点で何も決まっていませんが、必ずどこかの学年、あるいは全学年に影響が出てきます。

9月入学は在学生や浪人生など様々な人に影響を及ぼしますが、

この記事では、あまりメディアに取り上げられていない、

9月入学によって考えられる未就学児への影響をまとめました。

子育て心理カウンセラーとしての考察も含めています。

ご自身やお子さんがどんな影響を受けるのか、考えるきっかけにしてください。

→今年度・来年度の導入は見送られました。このような議論が行われた記録として、また今後議論が再燃したときのためにこのまま掲載しておきます。(2020/5/27)

9月入学になると未就学児の学年はどうなる?

現在、来年度(2021年度)からの9月入学導入について検討しています。

学業の遅れを取り戻すために、今年度を1年4ヶ月にしようというものです。

その際、在学生の学年は今のままの区切りとし、来年度からの9月入学で調整するという案が浮上しているのです。

すると、2021年度の新一年生

2014年4月2日〜2015年9月1日生まれの子ども(現年長〜年中児)となる可能性があります。

ではなぜ、新一年生だけが増えてしまうのでしょうか?

学校教育法による義務教育の開始は6歳0ヶ月と定められている

学校教育法第十七条では、以下のように定められています。

保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。

引用元:学校教育法

要約すると、6歳0ヶ月になった翌日以降にある入学日(学年の初め)から小学校に通わせなくてはならないということです。

つまり、2021年9月1日の時点で6歳になっている子どもは9月2日入学になります。

その子どもたちこそが、2014年4月2日〜2015年9月1日生まれの子です。

本来であれば、2022年の4月から入学予定だった2015年4月2日〜9月1日生まれの子が学校教育法の6歳0ヶ月の下限年齢によって、入学しなければなりません。

もし、2021年度に入学させるのを2014年4月2日〜2015年4月1日生まれの子とするなら法改正が必要になるのです。

しかし、法改正には多大な時間がかかるため、すぐに実施されるのか疑問が残る部分です。

9月入学が未就学児に与える影響

9月入学は、在学生や保護者、大学、教職員など多大な人に影響を及ぼします。

忘れてはいけないのが、学校に通っていない未就学児にとってのデメリットです。

影響を受ける生まれも紹介するので、該当する部分がないか確認してみてください。

2021年度の新一年生が爆増する

影響を受ける子:2014年4月2日〜2015年9月1日生まれ

先ほど紹介した学校教育法によって2021年度の小学校1年生が1.4倍になります。

1.4倍になることで考えられるデメリットは

  • 入試が激戦
  • 就職難に陥る
  • 教師の目が行き届かない

などです。

よく、「昔は就職氷河期だったから」「第二次ベビーブームの時も乗り越えた」などの話がありますが、この再来となる恐れがあります。

また、ベビーブームの際は特定の学年だけではなく、その前後の学年も人数は多かったはずです。

今回のコロナ騒動による人数の増加は、1学年だけなので、企業や学校がその受け皿を用意するのかについて疑問が残ります。

就職氷河期より、さらに厳しい状況が待ち受けていると言っても過言ではないでしょう。

義務教育の開始が7歳5ヶ月になる子が出てくる

影響を受ける子:2014年4月2日〜2014年9月1日生まれ

来年度の新一年生が2014年4月2日〜2015年9月1日生まれの子となった場合、

2014年4月2日〜2014年9月1日生まれの子は、現行の入学制度よりも義務教育の開始が約半年(5ヶ月)遅れることになります。

すると、2014年4月2日生まれの子は義務教育の開始が、7歳5ヶ月となってしまうのです。

これは諸外国と大きな差が生まれてしまいます。

海外の義務教育の開始時期は以下です。

  • イギリス……5歳の誕生日~
  • アメリカ…6歳
  • フランス…6歳
  • ドイツ…6歳
  • 韓国……6歳

参考資料:諸外国の義務教育制度の概要

義務教育終了の年齢は地域によって異なりますが、多くの国では満6歳になった次の学年(現在の日本と同様)に入学となっています。

しかし、9月入学になることで2014年4月2日〜9月1日生まれの子は約1年、諸外国と教育の差ができてしまうのです。

2014年4月2日生まれの子の場合、2021年度入学を考えると

アメリカなら新2年生ですが、日本の9月入学なら新1年生になります。

ただでさえ、海外より半年義務教育の開始が遅れているのに、さらに半年遅れても良いのでしょうか。

また、義務教育の開始が7歳5ヶ月となるのは、最低水準に近い数値です。

諸外国の人と同じ年齢なのに、教育が遅れているというのは、子どもの劣等感につながってしまう恐れがあります。

小学校受験が不利になる

影響を受ける子:2015年4月2日〜2015年9月1日生まれ、2014年4月2日〜2015年4月1日生まれ

あえて学年を分けて紹介しましたが、最も影響を受けるのは2015年4月2日〜2015年9月1日生まれの子どもたちでしょう。

先ほど紹介した通り、新一年生の爆増により、受験戦争は激化します。

そのなかでも圧倒的に不利なのが、2015年4月2日〜2015年9月1日生まれの子どもたちです。

幼少期の1年の差は非常に大きく、上記の子どもたちは1年半もの差がある年長さんと受験をしなければなりません。

どうしても名門小学校に入れたいがために、お受験に有利な4月生まれを望んで出産したママもいます。

それが一転、不利な立場になってしまうのです。

大人になれば、1年半の差は努力で埋めることができるでしょう。

しかし、生まれて6年しか経たない子どもに1年半を埋めろというのは、生きてきた4分の1を埋めることになり、16歳に4年の差を飛び級しろというようなものです。

よほどの秀才でなければ、その差を埋めるのは難しいでしょう。

また、親もお受験に合わせて様々な準備をしています。

突然、来年度から新一年生と言われても、十分な準備もできなくなってしまいます。

幼稚園での飛び級が出てくる

影響を受ける子:2015年・2016年・2017年の4月2日〜9月1日生まれ

9月で学年を区切ることになれば、4月2日〜9月1日生まれの子は1つ上の学年になってしまいます。

4月2日〜9月1日生まれの子の場合、

  • 今年度 年中児→2021年9月に新一年生
  • 今年度 度年少児→2021年9月に年長
  • 今年度 未就園児(来年入園予定)→2021年9月に年中

4月2日〜9月1日生まれの子は幼稚園で過ごす期間が短くなってしまいます。

突然、年少から年長になったり、入園早々年中になったり、大事な1年間が失われてしまいます。

特にデメリットが大きいのが、年長児を過ごすことができない2015年4月2日〜2015年9月1日生まれの子どもたちです。

「高校生活を取り戻させて欲しいから9月入学にして」という人もいますが、9月入学になれば年中児にとっては卒園までの1年間が無かったことになってしまいます。

幼稚園最後の行事も無ければ、卒園式も卒園アルバムも無くなってしまう可能性があります。

たとえ小さな子どもだとしても、ないがしろにしてはいけないのではないでしょうか。

また、「3学年差」「2学年差」と計画的に出産した人も、学年の区切りが変わってしまうことで家族計画が狂ってしまうことも考えられます。

保育園に預けられず働けない親が出てくる

影響を受ける子:2018年・2019年・2020年の4月2日〜9月1日生まれ

9月入学は入園前の子どもにも影響を与えます。

特に、職場復帰を前提としている保活ママです。

保育園激戦区の場合、0歳児クラスで入れるために早生まれを避けて妊娠したという人もいます。

しかし、9月区切りとなってしまうと、4月〜9月1日生まれは早生まれと同じようになり、保育園に入れられず離職を余儀なくされてしまうママもいるのです。

また、半年間入学が遅くなることにより、現在の年長児がそのまま在園しているため、待機児童が増える恐れがあります。

待機児童が増えれば、働けなくなる親も増え、さらなる経済状況の悪化を招きます。

コロナが終息してこれからというときに人手が足りないのは、経済にとっても大きな痛手のはずです。

思いがけず早生まれになってしまう子がいる

影響を受ける子:2015年以降の4月2日〜9月1日生まれ

先ほどお話した通り、幼児期の1年間には大きな差があります。

「4月生まれの子にできても3月生まれの子にはできない」ということが往々にしてあります。

もちろん、早生まれの良さもありますが、

それで苦労した経験がある場合、できる限り早く産んであげたいと考える人もいると思います。

「我が子に苦労させたくないという思いを無残に打ち砕かれた」という人も少なからずいるでしょう。

9月入学が未就学児の心に与える見過ごせない影響

なぜかメディアで取り上げられませんが、9月入学は未就学児の心にも影響を与えると考えます。

カウンセラーとして、どのような影響があるのか、考えられるリスクを解説します。

小さな心を守ってあげられるのは大人だけです。

友達と学年が分かれることによる不安

幼稚園や保育園においても、すでに社会は形成されています。

さらに、学年ごとに遊ぶ時間や内容が違うので、子どもながらに「上の学年のお兄さん・お姉さん」「下の学年の小さい子たち」と領域を分けています。

そして、「同じことを学ぶ同級生」。

この区切りが分かれ、突然同級生が下級生や上級生になるとどうなるでしょうか?

「どうして、私は〇〇ちゃんと一緒に年長さんになれないの?」と言われたらなんて答えますか?

子どもにコロナのせいだと言ってもわかりません。

私は幼稚園で先生が「ちゃんとお話聞けないと年長さんになれないよ」と言っているのを聞きました。

もしかすると、「自分はいけない子だから年長さんになれなかった」と思い込んでしまうかもしれません。

子どもの心を壊さないように、大人がケアすることが求められます。

幼児教育の不足による人格形成

幼児教育には発育段階に合わせたカリキュラムがあり、それぞれの学年に学ぶべきことがあります。

それを飛ばしてしまうと、その後の人格形成にも影響を及ぼす恐れがあるのです。

たとえば、

年長児は幼稚園の中でも最上級生であり、いつも先生がついて回っていた年少さんよりいろいろなことを任されます。

「年長さんだから、年少さんには優しくしようね」と先生に声をかけられた記憶がある人もいるのではないでしょうか?

社会において、自分より幼い子がいて優しくしなければならないことを学ぶのは大切なことです。

また、難しいことを任されて立派にやり切ったことは達成感につながり、幼児期に大切な自己肯定感を育むことにもつながります。

「自分は必要とされている」「自分は大事にされている」という自己肯定感は、子どもの心に自信と安らぎを与えます。

他の年代よりその機会が少なくなってしまうということは、人格形成にも少なからず影響があるのではないかと考えます。

親の不安や焦りが子どもを追い詰める

自分と同じ学年の子が増えてしまうと、

「他の子に負けないように勉強させなくちゃ」

「受験に向けて早期に準備をしておこう」

と、躍起になってしまう親もいるでしょう。

もちろん大切な我が子のためであり、大切なことです。

しかし、それは時に子どもを追い詰めてしまう可能性があります。

親もつい熱が入り、

「どうしてこんな問題もできないの?」

「早くやりなさい!」

と、叱りつけてしまいがちです。

人間の脳は、叱られると萎縮し、脳神経や細胞に害を及ぼします。

そして、叱られて育つと自信の基盤がないため、自己肯定感を得られません。

「自分はできない子」だと思いこみ、一生それを引きずってしまってもいいのでしょうか?

切磋琢磨し勉強に励むことは大切ですが、

親も不安と焦りから、子ども追い詰めてしまうケースが増えてしまうことが考えられます。

本当に解決できる?ネットにあふれる9月入学デメリットの解決案

9月入学によって未就学児が被るデメリットを紹介しましたが、ネット上で解決策もあがっています。

9月入学でも、未就学児が不利益を被らなければ、賛成できる人もいるでしょう。

ネット上の解決策で未就学児の9月入学の不安が解消できるのか、考えてみたいと思います。

マンモス学年の教員を増やす

2014年4月2日〜2015年9月1日生まれの子どもが新一年生になると生徒数は1.4倍になり、先生の目が行き届かなくなる恐れがあります。

それに対して、「教員を増やすことはできる」と考えている政府の方々もいらっしゃるようですが、

教員を増やすだけでは何も解決しません。

年齢の違いによる差別やいじめなどの対策にはなり得ません。

また、「子どもを見ることができればいい」と考えている人には、未就学児の学年の区切りによって起こる不利益について、想像が及ばないのかもしれません。

5年かけて入学月をスライドする

マンモス学年を避けるために入学月をスライドするという案を出した評論家もいます。

その案とは、来年度から1年度を13ヶ月分とし、5年かけて9月入学にするというもの。

つまり、

2021年度は2014年4月生まれから2015年5月1日生まれを1学年

2022年度は2015年5月生まれから2016年6月1日生まれを1学年

2023年度は2016年6月生まれから2017年7月1日生まれを1学年

2024年度は2017年7月生まれから2018年8月1日生まれを1学年

2025年度は2018年8月生まれから2019年9月1日生まれを1学年

とする案です。

確かにマンモス学年は避けられますが、保活や小学校受験を見据えて、4月〜8月に出産した親はどう思うでしょうか。

また、調整弁となってしまう子どもたちは「ひと月だから」と思ってもいいのでしょうか。

その「ひと月」の子どもたちは、もしかしたらクラスに1人かもしれません。

1人だけ年長さんに混ざって新一年生になる子の気持ちを考えると、実現させてはならない案だと思います。

2022年生まれから9月区切りにする

これから生まれてくる子どもから9月区切りにするというものです。

もちろん、お腹にいる赤ちゃんにも配慮が必要なので、正確にはまだ妊娠していない時期から。

そうすれば、妊娠をする前に家族計画を立てやすくなります。

また、子どもが増加してしまう年があらかじめわかっていれば、それを避けるということを親が選択できるようになり、マンモス学年が予想される学年の子どもの数も減るのではないでしょうか。

ただ、この年だけ生まれる子が少ないことに何かしらの弊害がある可能性もあります。

学年の区切りはずっと4〜3月生まれにする

学年の区切りを永遠に4〜3月にするという案もあります。

そうすれば、早生まれの問題や学年が変わってしまうリスクも避けられます。

しかし、グローバルスタンダードという観点で見れば、現時点で半年遅れている日本の教育がさらに半年遅れることになり、1年の差がついてしまいます。

そして、義務教育の開始が7.5歳になる子が出てきてしまいます。

これは、ここ数年だけの話ではなく、ずっと続くことです。

そのため、議論に議論を重ね、慎重に検討する必要があるでしょう。

9月入学で未就学児が犠牲になることのないように

9月入学は、幼稚園児・保育園児にとっても対岸の火事ではありません。

この記事を読んで「自分の子どもにリスクがあるかもしれない」と感じていただければ幸いです。

そして、この問題点を多くの人に知ってもらい、未就学児が犠牲になることのない解決策について議論が進むことを願っています。

まだ、9月入学に関しては何も決まっていませんが、全てが決まってからでは遅いかもしれません。

「小さな子どもの大きな未来のために」親ができることをしましょう。

※この記事に関しては、転載・引用可です。シェアをお願いします。

【2020.5.12追記】投稿から2日を待たず2000人を超える訪問がありました。そのほとんどがSNSからのアクセスです。みなさんのシェアに感謝すると共に、この声が確かに届いていることをご報告いたします。

→今年度・来年度の導入は見送られました。このような議論が行われた記録として、また今後議論が再燃したときのためにこのまま掲載しておきます。(2020/5/27)

 

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