2019年5月28日、朝の通勤・通学時間に凄惨な事件が発生しました。
神奈川県川崎市の登戸駅付近で、大人と子供あわせて19人が殺傷され、そのうち小学6年生の女児と39歳の男性の2人が死亡したという何とも痛ましい事件です。
何の罪もない未来ある少女の人生が奪われ、国際的に尽力してきた男性の命を奪った罪は到底許されるものではありません。
「ママー!ママー!」と泣き叫ぶ子供もいたと聞き、胸が張り裂けそうになりました。
その場に居合わせた児童も、心にとても深い傷を負っているでしょう。
このような事件を二度と起こさないようにすることが、大人の使命です。
しかし、犯人である岩崎隆一容疑者が自殺したことから、動機は不明なままです。
「なぜこんな凶行に及んだのか」それを心理学的に解明し、多くの人に知ってもらいたいと思い、記事にまとめました。
目次
岩崎隆一容疑者の犯行の特徴
岩崎隆一容疑者の犯行の特徴は
・犯行に要した時間は十数秒
・走りながら刃物を振り回し、手当たり次第に切りつけた
・犯行後に自殺
・包丁を用意して現場に向かった
このことから、岩崎容疑者は計画性を持ってためらいもなく犯行を行ったと考えられます。
衝動的な殺傷事件ではなく、「はじめから死ぬつもりで犯行に及んだ」ということでしょう。
通常、というとおかしな表現になりますが、誰かを殺そうと想像するときに迷いや怖さを感じるのが、人間の心理ではないでしょうか。
それを微塵も感じ取れない行動に、一種の異常性が読み取れます。
岩崎容疑者はどんな人物か
みなさんは、容疑者の写真が中学生のときの写真しか報道されないことに、違和感を感じませんでしたか?
ここまでSNSが発達し、51歳という年齢を加味しても知人や友人が撮った写真の1つや2つ、出てきてもおかしくないですよね。
これは、外部との接触を遮断していたためだと思います。
岩崎隆一容疑者は51歳、定職なし、両親は離婚し、小学校入学前後から80代の伯父夫婦と同居していました。
小学校・中学校時代の同級生の話からは
「おとなしい感じで暗い」
「友人を鉛筆で刺したり、突然キレることもあり、暴力的だった」
という話も出てきています。
さらに、大人になってからも庭木に関するご近所トラブルもあったそうです。
これらの情報を踏まえ、子育て心理カウンセラーとしての経験から、彼はある先天性疾病にかかっていたのではないかと推測できます。
岩崎隆一容疑者がアスペルガー症候群である可能性
子育て心理の観点から、岩崎容疑者は発達障害の一種であるアスペルガー症候群である可能性が高いです。
私自身、医師ではないので正確な診断を下すことはできません。
しかし、限られた情報から考察するとその要素を満たしていると考えられます。
アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群は、発達障害の1つで上手に対人関係を築くことができない先天性疾病です。
自閉症と異なるのは、言葉と知能に遅れが見られないことです。
アスペルガー症候群の子供は、他の友達と同じように勉強し、会話もできます。
そのため、友人や周囲の人にあまり気づかれません。
人とコミュニケーションを取るのが苦手なため、小中学校の同級生が話したとされる、
「おとなしい感じで暗い」という印象に留まってしまうのです。
もし、決定的に知能の遅れがあれば、そのようなコメントが真っ先に出てきてもいいはずです。
親でさえも、ただ単に「手がかかる子」「友達と遊ぶのが苦手な子」と思いこみ、あまり病気であることに気づくことがありません。
特に、数十年前まではまだこのような病気が一般的に広く知られていなかったため、岩崎容疑者の両親が知らずに躾をしていた可能性も十分にあるのです。
実は、この周囲に「気づかれない」というのが、大きな問題です。
アスペルガー症候群の特徴
・相手の気持ちを察することが難しい
・いつも通りであることを好む
・刺激に弱い
・柔軟に対応できない
・一方的に話をする
・大人との会話が好き
・曖昧な表現がわからない
これらが、アスペルガー症候群の特徴です。
例えば、同じ服ばかり着たがったり、お風呂を極端に嫌がる人もいます。
これは、彼らが刺激に弱いためだと考えられます。
同じ服ばかり着たがるのは、新品の服のノリが刺激になるから。お風呂に入りたくないのは、シャワーの刺激が痛いから。
子供だとそれをうまく大人に伝えることができずに、親から叱られることで、我慢をしてしまいます。
想像してみてください。黒板に爪を立てる音は、多くの人が嫌いな音ですよね。
これを、「なんで聞けないの!」と叱られ、毎日聞かされ続けることを。
堪え難い大きなストレスになるはずです。
病気の度合いは個人差があるため、一概には言えません。しかし、健常者がなんとも思わないことでも、大きな刺激を感じ、ストレスを感じる場合もあるのです。
岩崎容疑者とアスペルガー症候群の共通点
先に述べたアスペルガー症候群の特徴と岩崎容疑者の環境を検討してみます。
・「おとなしい感じで暗い」
「友人を鉛筆で刺したり、突然キレることもあり、暴力的だった」
→ひきこもり傾向であったことなどから、対人関係をうまく築くことができていない。
・近所の人の庭木が道路にはみ出し、その木の枝にぶつかったとして文句を言いに行った
→庭木が出ているのが間違っていて、自分が避けるという発想がない。いつも通りではないことに腹を立て、柔軟な対応ができていない。
・伯父夫婦が岩崎容疑者に手紙を書いた時に「食事や洗濯を自分でやっているのに、ひきこもりとはなんだ」と反論
→ひきこもりの定義が彼のなかに存在し、それ以外はひきこもりとは認めない。融通がきかない。
このように、非常に少ない情報からでも、アスペルガー症候群である可能性が見えてくるのです。
アスペルガー症候群の人が犯罪を犯す訳ではない!環境が追い詰める
決してアスペルガー症候群の人が犯罪者になるわけではありません。
周囲がそれに気づかずに「普通である」ことを強制し続けた結果、心が崩壊し、憎しみや怒りの矛先が社会へと向くのです。
岩崎容疑者の場合はどうでしょうか。
両親は幼い頃に離婚しています。どちらかが親権を持ち、子供を引き取るのが一般的です。
しかし、岩崎容疑者は叔父夫婦に引き取られています。
ここからは、私の推測になりますが、岩崎容疑者がアスペルガー症候群だったと仮定した場合でお話していきます。
アスペルガー症候群の子供は、知能や言葉の発達の遅れがないので、気づかれにくく、ただ単に「こだわりの強い子」「怒ると手が出やすい子」などと思われますが、
症状の重さによっては、思い通りにならないと発狂し、泣き叫び、手が付けられないこともあります。こだわりの強さが、ほかの子たちと比べ物にならないのです。
そのため、育てる親も大変苦労します。
言うことを聞かせようと、母親が叱っても言うことを聞かず、父親には「母親の躾が悪いからだ」と言われ、
やがて夫婦仲が崩壊し、離婚に至るケースもあります。
両親では手に負えないと判断し、親戚に引き取ってもらう場合もあるのです。
このケースが、岩崎容疑者の状況に似ているように思われます。
もしかしたら、両親は他の理由で離婚したのかもしれませんが、幼少期にこのような経験をしたらどう思うでしょうか。
「自分は愛されていない」「必要とされていない」と感じてもおかしくないでしょう。
さらに、叔父夫婦も、コミュニケーションを取れていないようなので、心を閉ざし孤独を深めていったのでしょう。
個性を認めてありのままを受け入れることが愛情
一目でわかる先天性疾病とそうでないものがあります。
なかでも難しいのが、先にも述べたアスペルガー症候群です。
小さいうちは、ただの我儘なのか見分けがつきにくくなります。
また、自分の子供に先天性疾病があることを認めたくない親もたくさんいます。
保育園や学校で先生に指摘されても、「そんなことない!」と思ってしまう気持ちもわかります。
しかし、アスペルガー症候群は放っておくことで治るものではありません。
疾病を認め、正しい対処をすることで、子供の心は守られ、自立できるようになります。
どんな人にも得意な部分も脆弱性もあります。
前に人が立っていても真っ直ぐにしか進めず、ぶつかっていくようなら、叱らずに避け方を教えてあげてください。
そして、できないことに目を向けるのではなく、できることを伸ばしてあげてください。
「どんなあなたも愛している」ことを伝えてください。
自己肯定感を持つことで、自分を大切にすることができます。
子供を守るために大人ができること
子育て心理カウンセラーとして、川崎登戸殺傷事件について考えてきました。
本人に確認するすべがない以上、憶測で話をしましたが、幼少期の経験が今回の痛ましい事件に繋がった可能性もあると思います。
今回、十数秒の間に19人もの死傷者を出したことを考えると、被害にあった子供たちを守る術はあったのか。防犯ブザーを持っていてもすぐに押せただろうか。
ナイフをいくつも持った犯人に、大人でも抵抗することができただろうか。
どうしたら、子供たちを守ることができたのか。
それを考えたときに、犯罪を犯してしまう人間を減らすことも対策の1つだと思いました。
仮に岩崎容疑者が先天性疾病を患っていたとしても、凶行は決して許されるものではありません。かといって、岩崎容疑者を育てた両親に全責任があるとは思いません。
この先天性疾病が広く知られていないことが原因の1つだと考えます。
アスペルガー症候群のほかにも、多動性障害や注意欠陥障害なども周囲が気付きにくい疾病です。
この疾病が多くの人に認知されることで早期発見され、適切に対処することで、子供の心は守られます。
それが、凶悪な犯罪を減らす手立ての1つになるでしょう。
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